ウサギ、カエルにサルと、キャラクターの元祖とも言える、国宝『鳥獣戯画』の動物たち。
数ある動物の中で、絵師はどうして彼らを登場人物として選んだのでしょうか?
絵をよーく見ると、その理由が見えてきます。
【本文】
動物たちが生き生きと描かれた、京都の高山寺に伝わる国宝の『鳥獣戯画』。
甲・乙・丙・丁の4巻からなる絵巻物で、最も有名な甲巻では、ウサギとカエルが相撲を取ったりと、動物たちが人間の暮らしの真似ごとをしています。
各場面の物語を想像するだけでも楽しいですが、今回はちょっぴり見かたを変えて、そのシーンを描くにあたり「なぜその動物が選ばれたのか」を考えてみたいと思います。
キツネの尻尾にある「ポフッ」は何ぞや?
甲巻では、ウサギさんチームとカエルさんチームに分かれて賭弓(のりゆみ)をしている場面が描かれています。
賭弓は、褒賞を賭けて弓の腕を競うもので、宮中行事でもありました。
的の横に立つのは、矢を数える係のウサギとキツネ。キツネは尻尾を手で持っており、その先には「ポフッ」とした何かが描写されています。
この「ポフッ」は〈狐火〉だそうで、キツネはその灯りで的を照らしているのでした。
もちろん狐火はファンタジーの世界のお話ですが、日本各地に狐火の怪談が伝わっていたり、歌川広重の浮世絵・名所江戸百景『王子装束ゑの木 大晦日の狐火』に描かれていたりします。
また、実際の賭弓でも日が暮れてくると松明で的を照らしていたそうです。
このことから、キツネは狐火のスキルがあるからこそ、照明係に抜擢されたのでしょう。
【INFO】
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